職人のキャリアパスどうする?

仕事

IT業界が盛り上がっている中、僕は10年以上鞄(カバン)を製造している会社に勤めています。
ふと考えた時に、入社当初は”独立をして自分の工房を構えるんだ!”と夢見ていました。
でも、仕事するなかで外部の職人さんと会う機会も増え、その表情を見るとシンプルに
”幸せそうじゃない…”と思うようになりました。
毎日、納期に追われて品質で文句を言われ(僕が言うんですが…)来月は依頼があるかもわからない不安定な状態でベストパフォーマンスを求めれる。そんな中でこの業界で独立することを考えないようになりました。

今、僕は管理職なので、ミシンを踏む機会も減って管理業務がメインになっています。
でも100名近い部下たちは将来どうなりたいのか?現状に不安は感じてないのか?国内製造の意味とは?そんなことを日々考えるようになりました。
会社は、”職人がつくっている良い商品”として売り出しているが当の職人の待遇は、、、
ここでキャリア設計を整えて立て直さないと自社製造の価値がなくなってしまうと思い職人のキャリアについて、書いていこうと思います。

会社の求める職人像を考える

僕の働いている会社には、明確な職人像が存在しません。
職人とは!みたい家訓みたいなのは無いんです。
どこを目指すのか?ここは大きな分かれ道です。
100名以上の工房で目指す道としてイメージしたのは、、、

【エルメス】HERMES

『エルメス(HERMES)』とは、エルメス・インターナショナル社の中核ブランドです。


エルメスの歴史は1837年にパリランバール通りに高級馬具のアトリエをオープンしたことに始まります。

その後、ナポレオン3世をはじめロシア皇帝など貴族の御用達ブランドとして発展しました。
1945年より起用されているブランドロゴは「ル・デュック」。
四輪馬車と従者が描かれたその姿は「エルメスは最高の品物を用意しますが、それを御するのはお客様自身」という意味が込められているといいます。
現在本社はフランスのパリ。
”開発から生産・販売まで一貫して本社で管理する体制”は今でも崩さず、高い商品価値と高いブランドイメージを維持し続けているブランドです。

【スターバックス コーヒー】Starbucks Coffee

「スタバ」の愛称で親しまれている世界的なコーヒーチェーン。
1971年、スターバックスがシアトルに誕生します。
コーヒー豆の焙煎と販売を行う店としてオープンしました。

1990年ごろから会社の目的を明確に伝えるために言語化しこれを土台にあらゆる意思決定の適不適を判断する基準を定めました。
そして、このミッション・ステートメントを起点に50人以上の従業員とともに、3ヶ月間をかけて経営戦略策定を行いました。その過程では、様々な仕組みが生まれました。
一つはミッション・レビューという仕組みです。

”全従業員にカードを配り、会社の決定がミッション・ステートメントに適していない場合には、ミッション・レビューチームに直接意義を申し伝える”ことができるというもの。

理念の前に上司部下はなく、平等である。ハイフラットな組織を目指しています。


この2つの企業をイメージしました。
どちらも教育体制が整っており、プロ意識をもって仕事をしている印象だったからです。
教育体制やゴールイメージの違いについてまとめていきます。

教育体制について

【エルメス】HERMES│職人の育成と技術の継承

エルメス家の6世代目が率いるエルメス社は1837年の創業以来、毎年職人を育成している。エルメスは、馬具製造から皮革製品製造へ、技術と礎(いしずえ)はそのままに、ものづくりを発展させてきた。創業以来、“与えられたものをお返しする”という、この継承の哲学がメゾンの核となっている。

エルメスのものづくりの中心は人だ。そのことが社会面においても環境面においても、持続的な成長への挑戦を可能にしている。世界中で15,000人もの従業員を抱えており、そのうち3分の1以上が職人だ。同じファミリーであるという意識を保てるよう、各工房で働くのは250人から300人とし、それ以上にならないように調整している。

革製品の生産は、フランス国内でのみ行われている。パリおよびイル=ド=フランス、ノルマンディー、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテなどに位置する20余りの工房とアトリエ内で、4,000人以上の職人が生産に携わっている。

研修について

エルメスは80人以上のトレーナー、200人以上のメンターに支えられている。
それは職人の育成への継続的な投資を意味している。
職人は2期18カ月のトレーニングを受ける。
・1期目では初歩的なサヴォワールフェール(職人技)を身につけ、
・2期目はメンターとマンツーマンでの“実践”を行う。

フィードバックについて

本当の意味で育成にゴールはなく、職人はキャリアの続く限り、ノウハウを一生磨き続け、メゾンは、サヴォワールフェールを究極まで追求し、継承し続けることを目標としている。

例えば、ヴォー・エプソンとヴォー・トーゴを同じ方法で裁断したりはしないし、バッグ《コンスタンス》とバッグ《バーキン》の組み立て方は同じではない。素材ごと、モデルごとの製作プロセスがひとつの訓練メニューに相当する。
たいていの場合、実習はバッグ《ケリー》から始められる。なぜなら、最も多くのサヴォワールフェールが必要とされるからだ。そのプロセスをひと通りマスターした職人は、他のモデルでさらにノウハウを学んでいく。

ひとりの皮革職人が36の革のピースを縫い、ステッチをかけ、貼り合わせ、組み立て、いくつかの金属の部品を使ってバッグ《ケリー》を完成させるのに、15時間から20時間が必要だ。物事を正確に行うには時間がかかるのだ。“ひとりが、ひとつのバッグ”というメゾンの哲学に沿い、職人は最初から最後まで、すべてを自身の作業台の上で行う。

よい縫製はよいパリュール(革漉き)から。よいパリュールはよい分割から、よい分割は皮革の細部と欠点の丹念な分析から、といわれる。それぞれの工程が繋がり、優れたもの作りの連鎖となるのだ。オブジェには作った職人の魂の一部が宿る。自分の手でつくったオブジェは、ひと目見るだけで区別できるという。

キャリアロードについて

明確なキャリアロードは調べることはできませんでしたが、上記に書いたように技術を追求するというのが答えのように感じます。

驚かされたのは、エルメスの職人頭には、トップマネジメントでさえも口を出せないほどの強い権限をもっていることでした。トップマネジメントは職人を尊敬しており、「余計なことは言わない」のがエルメスのブランディングにとって大切であると心得ていました。

https://president.jp/articles/-/43657

このようにマネージャーよりも職人をリスペクトした組織のようです。

職場環境

エルメスは常に従業員の健康および幸福に留意している。職人たちに求められるのは、精密さと集中力。そのためにも、働く人の能力が発揮できるような環境が整備されている必要がある。
工房内の環境をより良くするには、仕事場の環境が、人間工学的に優れているかどうかが重要だ。

各自が快適で気持ちの良い環境で仕事が進められるよう、作業台の調整、照明のクオリティ、アトリエの音響環境、温度調整は万全に整えられている。
工房における最優先課題は、環境基準の遵守。水やエネルギーなどの天然資源の消費は、厳格に最適化されている。

【スターバックス コーヒー】Starbucks Coffee│”パートナー”育成

スターバックスの文化を体現し、顧客体験をパーソナルで思い出深いものにする「パートナー」と呼ばれる特別に教育されたバリスタたちです。

研修について

一般的な飲食店で働く場合、研修に割かれる時間は2~3日ですが、スターバックスは学生アルバイトも正社員も分け隔てなく、のべ80時間、約2ヵ月に及ぶ研修を受けることが決められています。
その研修では、スターバックスの基本理念である「お客様に感動経験を提供して、人々の日常に潤いを与える」を実現するために、コーヒーの淹れ方を教わる前に、スターバックスのミッションや歴史を学びます。たいていの企業では、社訓はお題目になってしまいがちですが、スターバックスの場合、80時間の研修を通して、働く一人ひとりがミッションを実行できるように人材育成するのです。

スターバックスの人材開発部門は、新入社員研修プログラムを作成する際に、
70:20:10アプローチを採用しました。
・70%はパートナー(従業員)によるOJT研修
・20%はメンターであるコーチからのフィードバックで習得
・10%はオンラインのEラーニングで学ぶ

というアプローチです。

新入社員は、店長や、専任のトレーナーから新入社員研修を受けます。
その中には、 “Starbucks Experience” というプログラムが研修に含まれています。
このプログラムの中で、”パートナーは会社の歴史” ”社会的責任” ”企業文化”を習得します。 “Starbucks Experience” プログラムは、通常、その地域にある研修センターで新入社員対象に実施されており、遠隔地では店舗内で教えられます。
各店舗には研修や教育に特化したコーチが配置されており、新入社員にバリスタとしての基本を教えながら、実践的な研修プログラムを指導しています。

フィードバックについて

「是正」のフィードバック
「是正」とは、相手の行動を、正しい方向に導くこと。
「是正」では、うまくいかなかったとき、相手を責めるのではなく、どうすればよかったのかを気づいてもらうのが目的。「なぜ?」「どうしたの?」と問いかけ、取った行動と取るべき行動を必ず本人に考えさせます。ここで正しい答えをポンと与えてしまうと、相手は自分の頭で答えを考えて行動しなくなるので、それは避けます。
「強化」のフィードバック
逆に、うまくいったときに行うのが「強化」のフィードバックです。「強化」のフィードバックでは、よい行動に対して、ほめるだけではなく、何がどうよかったのかを本人に問いかけ、具体的に分析させます。こうすることで「次もやってみよう」というモチベーションが生まれ、よい行動を慣習化できます。

Eラーニングについて

ブランドを成功に導くのは、何百、何千もの店舗で一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供することが大切です。スターバックスをはじめとする多くの小売店が採用している従業員教育に対するマルチレベルのアプローチには、デメリットがないわけではありません。

子どもの頃に遊んだ「伝言ゲーム」のように、複数の人を介して何かを伝えると、その度に歪みが生じ、地域や店舗ごとに研修に違いが表れ、一貫性が失われてしまうことがあります。トレーナー・マネージャー・社員の順で育成し、その社員が同僚を育成するというプロセスでは、研修に無意識のバイアスがかかることが多く、場合によっては、新入社員が全く間違った研修を受けることにもなりかねません。

職場環境

・仲良しチームにはしない
人間関係やチームワークのよさで知られているスターバックスですが、どこの店へ行っても、よい意味での緊張感を保ちながら、皆がテキパキ働いています。スターバックスで働くパートナー同士が、お互いに抑止力のなくなる仲良しチームにならないのは、共通認識としてルールがあるから。そのルールとは、主に下記の3つです。

・明確な目標がある
店の売り上げ目標/ストアマネージャーと考える個別の目標など、スターバックスでは常に目標を掲げることを求められています。

・1人1人の役割が決まっている
トレーニー、バリスタ、シフトスーパーバイザー(時間帯責任者)など、それぞれの役割ごとにやるべきことが明確に決められており、協働における連帯感があります。

・お客様のために働くという意識を持つ
お客様のために何ができるかを考えることが最大の使命。自分はよくやっていると内側からの評価ではなく、お客様がどう感じたかという外側からの評価を重視することで、抑止力を欠いた、自分本位の考え方から抜け出せます。

キャリアロードについて

新卒社員は入社するとまず営業本部に配属となり、店舗のアシスタントストアマネージャーからキャリアをスタートします。パートナー・お客様とのつながりを生み出す場所であり、私たちがOur Mission and Valuesを体現する場所である店舗で、私たちのビジネスの本質を理解し、その経験をもとにさまざまなキャリアを選択します。

https://www.starbucks.co.jp/recruit/newgraduate/work/

スペシャリストの先にマネージャーや部長などの管理職があることが、職人として希望が持てると感じますね。

まとめ

エルメスは、職人が技術を追求し高めていくことに投資しており、終わりなき技術習得をしているように感じました。

変わってスターバックスは企業理念を理解し、ある程度の技術を身につけたらマネージャーなどの管理職の道が開かれるような流れのようです。


僕の勤めている会社が職人の道としてどちらのキャリアロードを選ぶのか、、どちらも選らないのか。
これから、この決断は大きな分かれ道のように感じます。

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